お米のできるまで

※ 地域の方に原川農園の米つくりを理解してもらうために看板を掲げています。

ただの米じゃない、こだわりの米

 菊池掛け干し清流米

 おいしさ ⇒ 天日掛け干し
        有機肥料とミネラル分のバランス

 無農薬 ⇒ 除草はタニシ
       病気(いもち病など)害虫(ウンカなど)は消石灰散布
      

原川農園のお米のできるまでをご紹介します。

1.播種(はしゅ:種まきのこと)

田植え機用のトレイ(お盆のような箱)に紙を敷いて、殺菌済の土を入れて、種籾を蒔きます。その上に土をかぶせてできあがりです。

※下の写真は種籾を蒔くための播種機です。トレイは写真左から右へ流れます。軽トラックの荷台には播種済みのトレイが載っています。

平成29年より種籾(たねもみ)の品種は「にこまる」にしました。

従来は、「ヒノヒカリ」でしたが、菊池市役所主催の「米つくり研修会」で、この2種の試食がありました。銘柄は伏せてあり、食してみると、「にこまる」がおいしかったのです。うちの家族も同じ意見でしたので品種を変えました。

「にこまる」は平成の初期に開発された品種で、耐暑性に優れている品種です。最近の異常気象による夏の40℃近い暑さに耐えられるように品種改良されました。

2.苗床つくり(田んぼへトレイを並べる)

播種の終わったトレイを軽トラックに載せて、水をはった田んぼへ運びます。
※下の写真はトレイを田んぼに並べたところです。

トレイを並べる前には、土の上にラブシートと呼ばれるビニール製のシートを張ります。この上にトレイを並べます。ラブシートは、根が田んぼの土の中に入らないようにするためのシートです。生育したあとトレイを土から取りやすく(剥がしやすく)するためです。

トレイをラブシートの上に並べたら、不織布をトレイにかけて乾燥や虫などを防ぎます。また、鳥が種をついばまないように、キラキラ光る反射テープを張り巡らします。
水のレベルは、トレイの下が少し水に浸かる程度にします。水面を上げると、せっかく植えた種籾が浮いてしまいます。

播種から約3週間から4週間で苗が15㎝くらいになったら田植えになります。
下の写真は生育して田植えのために取り出されたトレイです。

3.田植え

(1) 代掻き
 田植えの前には田んぼに水を入れて、耕しておきます。農園への田んぼの水は、日本名水百選に選ばれた菊池渓谷の水です。この水は台地の尾根に造営された原井手(はるいで)をつたって流れてきます。

上流にある田んぼから順に田植えをしてくるので、一番下流にある当農園の田んぼの田植えは、遅いときは6月末になってしまいます。

※下の写真のように、水がきれいなので、犬の水浴びもします。

原川農園では除草剤を使いません。タニシ(マルタニシ)が草を食べてくれます。タニシは前年の稲刈りの時期から当年の田植えで水がはいるまで冬眠しています。カラカラに乾いた田んぼに水がはいるときはタニシも水の恵みを喜んでいることでしょう。

平成29年にはドジョウを放流しました。ドジョウも冬眠します。トラクターで耕耘しますが、水を入れた直後の代掻きでは深く耕しません。せいぜい10cmの深さにします。トラクターのロータリーでタニシやドジョウを傷つけないためです。

代掻きで重要なのが、田んぼの地面の水平度です。一部分高いところがあると、水を少なくしたときにその部分の土が大気中に出るために草が生えてしまいます。田植えの後の水は、稚苗をタニシが食べないように水を少なくします。水が多いとタニシが水に浮いて稚苗の先の柔らかい葉を食べるからです。水を入れたときに、田んぼの中で、深いところ、浅いところがあるとよくありません。

そこで、できるだけ水平を出すために、高いところの土を低いほうへ移動させます。トラクターの耕耘部のロータリーは回転させずに、耕耘部を田んぼに降ろしたままで土を移動させます。

(2) 田植え

当農園の田植え機は乗用型クボタの4条植えです。(平成27年までは歩行型の田植え機を使っていました。)相当使いふるした機械ですが、購入のときには植付け部の爪や、タイヤなどは新品と部品交換、エンジン調整などもしてもらいました。田植えの技術は、田植え機そのものも重要ですが、稚苗の成長具合、トレイの中の苗の密集ぐあいなども重要な要素になります。

 

※下の写真は、田植えをを前に並べられた苗のトレイ

※下の写真は田植え風景です。

 

 

 

4.管理作業

(1) 田んぼの中の雑草の管理、畦草(あぜくさ)の管理
 田んぼの草はタニシが食べてくれますので、殆ど作業がありません。畦草(あぜくさ)から病気がはいることがあるかもしれませんので、刈り払い機で草刈します。刈り取った草は持ち出さずに、畦の上にうまく残しながら草刈をします。

※下の写真に写っている黒いかたまりがタニシです。

 

 

(2) 水の管理

水は間断潅水、深水、浅水、水落とし、満水など時期によって水を入れたり、落としたりして田んぼの水を管理します。

また、秋10月の収穫時にコンバインを使う場合、機械がスリップしないように田んぼの落水を早めて乾かす必要があります。落水が早いと登熟不良となり、玄米の収量と品質低下を引き起こすので注意が必要です。

一方、当農園では2条刈りのバインダーを使いますので、少々田んぼが乾いていなくても作業できます。そこで収穫前ぎりぎりまで、水を入れて実が熟すのを待っています。

(3) 病害虫の管理(無農薬)
 病気は殺菌することで対処、害虫は天敵で退治したり、そもそも虫が来ないようにすることで対処するのが基本です。
平成29年には、夏の暑いときに葉いもち病が発生しました。先輩の農業者に聞いたところ「それは石灰を撒くとよかたい。」そこで、「石灰はどうやって撒くのですか?」と更に尋ねると、「それはわからんたい。」ということで、本を買って勉強しました。

葉いもち病

そこでわかったのは、「用いる石灰は、消石灰、風のない夕方、白い粉が稲の葉にうっすらと白くなるように撒く。」ということでした。

※下の写真は散布機で消石灰を撒いているところです。

これにより、いもち病は、見事に消えてなくなりました。
害虫は収穫前に発生するウンカです。小さいハエのような無数に飛んでいます。木酢液を撒きましたが、ウンカは来ました。今後の課題として残ります。

5.稲刈りと掛け干し
 稲穂が黄色くなり頭を垂れて来たころに稲刈を始めます。原川農園では掛け干し(自然乾燥)しますので、バインダー(稲の結束機つき刈り取り機械)を使って作業をします。
バインダは2条刈で、刈り取った稲を束ねて、麻ひもでむすんで、機械の横へ放出します。
一方では、刈り取りと同時に掛け干すための横竿を作って行きます。竿の両端は3脚で途中は2脚で支えます。掛け干し竿は竹です。孟宗竹が何年経っても強いですが重いのが難点です。真竹は直径10cmくらいで扱いやすいのですが、腐りやすく弱いのが欠点です。

竹は毎年山に行って運び出していますが、切り出し、運び出しに労力がかかるので、その軽減のためにホームセンターで販売している材木を使う予定です。

真竹を取りに原川農園所有の山に行きます。

掛け干しは約3週間から4週間、掛け干し期間途中で台風が来たり、雨が降ったりすると掛け干し期間を長くせざるを得ません。

掛け干しをすると、稲の茎に蓄積された養分が逆さになってお米に溜まるのでお米がおいしくなるようです。

※下の写真は掛け干しの様子です。

秋の空の下の掛け干しで、どのくらい乾燥したかは、含水率計で測定します。およそ含水率15 ~16 %まで乾燥する必要があります。乾燥不足だと保管中にカビが生えるからです。

掛け干し作業終了後の記念撮影

原川農園には含水率測定器がありませんので、精米所に掛け干し米を持参し測定し、結果がよければ掛け干しを終わり次の脱穀という作業に進みます。


6.脱穀 

脱穀はキャタピラーで移動する脱穀機(ハーベスターとも言います。)を使います。掛け干しの横竿に沿って移動しながら、稲から籾を取っていきます。取った籾は袋にたまり、残った稲わらはハーベスターの脇に排出されます。収穫した籾のはいった袋を目立つところに置いておかないと、軽トラックで回収して回るときに見落とします。
この後、収穫した籾を菊池市の「米の蔵精米所」に持っていって、玄米にしてもらいます。

掛け干し米の脱穀作業


7.藁切り
 収穫後は残った藁をトラクターで土に漉き込みやすいように、エンジン式の藁切りカッターで切断します。約8cmの長さに切ります。エンジン藁切りカッターは車輪着きの台車の上に載っていますので、動かしながら排出方向を変えることで、まんべんなく切った藁が田んぼに散らばるようにします。

※下の写真はカッターで稲わらを切っているところです


8.土つくり
稲つくりは土作りです。藁切りの後は次の作業を行います。

⑴ 堆肥撒き
 知人が酪農をしているので、完熟した堆肥を撒いてもらいます。

(2) 苦土石灰、場合によっては発酵鶏糞を蒔きます。
 ※トラクターに牽引させたライムソワーで苦土石灰を撒きます。

これらを撒いたあとに、稲株と一緒に耕耘します。

(3) ヘアリービッチの種まき
 通常、土中の窒素分を固定するためにレンゲ草をまきますが、レンゲ種子の撒く時期は遅くて10月中旬頃までにしないと発芽しません。原川農園では掛け干し期間が終わるのが11月初め、それから堆肥を撒いて耕すと11月末になるので、ヘアリービッチを撒いています。ヘアリービッチは春3月頃には発芽して田んぼを埋め尽くします。

春の田んぼを埋めるヘアリービッチ

以上

農園主の紹介

農園主  原川修一

1956年、熊本県菊池市生まれ、九州大学卒業後、東洋エンジニアリング株式会社に入社、アメリカ、ドイツ、インドなどの海外での仕事を担当、40歳で熊本へUターンしました。

父母が亡くなり空き家となった実家と残された田んぼで試行錯誤を繰り返して、近所の方々や、米つくりのベテランのおかげで米つくりができています。

他の農家とは違った米つくりを志向して、完全無農薬、昔ながらの天日干し(掛け干し)で、米つくりをしています。

経済産業大臣認定 中小企業診断士(登録番号 107088)、特定社会保険労務士(登録番号 43050026号)日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格者